おススメ度 94
※映画のネタバレあります。
あらすじはこんな感じ。
元「トーキング・ヘッズ」のフロントマンでグラミー賞受賞アーティストのデビッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に作られたブロードウェイのショーを、「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が映画として再構築。同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲など、全21曲を披露。バーンは様々な国籍を持つ11人のミュージシャンやダンサーとともに舞台の上を縦横無尽に動き回り、ショーを通じて現代の様々な問題について問いかける。クライマックスでは、ブラック・ライブズ・マターを訴えるジャネール・モネイのプロテストソング「Hell You Talmbout」を熱唱する。パントマイムや前衛パフォーマンスの要素も取り入れた斬新な振り付けを手がけたのは、過去にもバーンの舞台を手がけたアニー・B・パーソン。ブロードキャスターのピーター・バラカンが日本語字幕監修を担当。
2020年製作/107分/G/アメリカ
原題:David Byrne's American Utopia
配給:パルコ
劇場の感想の前に・・・
早めに映画館に到着して、席を予約したのですが、いざ、席に座ろうとしたら、隣の席に人が座ってたんですよね。
しかも、目を瞑って、頭を立てノリしている人がいたんですよ。
声を掛けようと思ったのですが、何か言われて興を削がれるのも嫌なので、受付に行って、席順を確認してもらったら、頭を立てノリしている人が、席順を間違って座っていることが発覚。
従業員さんから、お客様に声をかけますか?と言われたのですが、他の席も開いていたので席を替えてもらいました。
この件で学んだことは、座る前に席順は確認しよう!!でした。
そういえば、スターウオーズ9でも、後から入場した人が隣に座ってきて、席をひとつずらした記憶が思い出しました。
日常から離れて映画の没頭したいのに、モヤモヤした中映画を鑑賞していました。
書いていて器が小さいなぁと、もっとどっしりと構えていたいものです。
劇場版の予告編で知り、デイヴィッド・バーンよりも、『監督スパイクリー』に興味を持ちました。
鑑賞前は、スパイクリーがライブ映像の監督出来るの?どうなの?とか、かなり大上段から思っていたのですが、映画を鑑賞後は、スパイクリーでしか成立しない映像になっていました。
映画と舞台の良い部分が、相乗効果で稀有な映画体験をすることができましたよ。
この舞台をおおまかに説明すると。
『裸足でグレーのスーツを着た、男女がワイヤーレスの楽器を装着して歌ったり、踊ったりするライブ映像。』なのですが、この映画でデイヴィット・バーンという存在を知れたことが、最大の収穫でした。
白髪の初老の男性が舞台中央に立っているだけなのに、何か惹きつけられて、そこに楽器隊が合流して、一つのアンサンブルが出来上がる瞬間の高揚感は沢山の人に体験して欲しいと思いましたね。
個人的には、『Burning Down the House』や『I Should Watch TV』が印象的でした。
鑑賞していて何度も感情が揺さぶられるのが不思議だったのですが、ダンサーや、キーボードやパーカッションを担当している人達の技術と、音楽を楽しんでいる姿勢に心を打たれたのだと思います。
この舞台は、アメリカ大統領選の時期でもあり、曲の合間に、デイヴィット・バーンが、様々な国の出身者がいるバンドのメンバーを紹介しながら、幼いころスコットランドからアメリカに来て、多くの移民がアメリカにいる、移民がいなければ成り立たない。というコメントが印象に残りました。
この舞台の映画的な手法として、カメラ―ワークが挙げられます。
普段なら正面からしか見れない構図を、上から見ることが出来るのは映画ならではだと感じました。
マーチングバンドのようなフォーメンションも、横からではなく真上から撮影することで映画の盛り上がりに一役買っている効果もあるなと思いますし、シャネール・モネイのカバー曲『Hell you Talmbout』の時に、スパイクリーが監督をする理由が理解できました。
この『Hell you Talmbout』という曲の説明ですが、白人の暴力で命を落とした黒人たちの名前を連呼する構成の曲で、デイヴィット・バーンがこの曲の対極にあるのは鎮魂歌だと思う。という言葉が印象に残りました。
ただ名前をパーカッションや打楽器の音と共に叫び続ける曲。
名前と同時に当事者の巨大なパネルが映し出される。
巨大なパネルを持って、怒りと、悲しみが混ざったような表情をして我が子のパネルを持つ母親。
スパイクリー監督の映画は、基本的に人種差別されている黒人がテーマにあるのが多く、自分のメッセージを伝えるためには、映画の世界観が揺らいでも構わないと思っている部分もあるので、最終的には、映画から現実へと急にシフトすることが多い印象があります。
最後まで鑑賞すると、「この問題は、映画が終わった後も続いてるからな!!終わりじゃなくて、今も続いてるからな!!」と、スクリーンから立体的に飛び出したスパイクリー監督本人から胸倉掴まれるような気持ちになります。
その状態を、私は勝手に『映画からはみ出て居る』って表現しています。
そういう意味では、この舞台は『はみ出て居る』映画なのです。
この映画体験は、映画館でみないことには始まりません。
なので、興味ありましたら是非映画館で鑑賞してみてください。