※映画体験として、アベンジャーズ・エンドゲームと肩を並べる作品でした。
(これは冗談では無くて、本気です。)
昨年に鑑賞した映画の感想をあれこれと。
昨年、『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』を鑑賞して、Facebookに投稿していたのですが、一部書き直して、こちらのブログにも投稿いたします。
※映画の内容に触れていきます。
あらすじはこんな感じ。
尾道の海辺にある唯一の映画館「瀬戸内キネマ」が、閉館を迎えた。嵐の夜となった最終日のプログラムは、「日本の戦争映画大特集」のオールナイト上映。3人は、映画の中で出会った、希子(吉田)、一美(成海)、和子(山崎)ら無垢なヒロインたちが、戦争の犠牲となっていく姿を目の当たりにしていく。3人にとって映画は「虚構(嘘)の世界」だが、彼女たちにとっては「現実(真)の世界」。彼らにも「戦争」が、リアルなものとして迫ってくる。そして、舞台は原爆投下前夜の広島へ――。そこで出会ったのは看板女優の園井惠子(常盤)が率いる移動劇団「桜隊」だった。3人の青年は、「桜隊」を救うため運命を変えようと奔走するのだが……!?
コロナが無ければ、上映日が大林監督の命日と重なるという、大林宜彦監督の最後のサプライズともいえる奇跡が起きたこの映画。
残念ながら映画が延期となり、映画の存在も忘れかけたころに、映画館で上映されることを知り、足を運んだ次第です。
上映時間は約3時間ですが、アベンジャーズシリーズを鑑賞した者としては、そんなのは体感時間として2時間みたいなもの。
開始時間5分前に到着、トイレ、ドリンク購入、そしてシアターへと流れるように入場。
映画開始1分で、もう大林宜彦節ともいえる、奇怪で(褒めています)ぶっ壊れている(激賞)映像が流れてきて安心しましたよ。
閉館する映画館で上映された映画の世界に入っていく主人公たち。
そこで様々な時代の戦争を追体験していくのですが、最初はコミカルな描写からスタートして、少しずつ、戦争の悲惨さや暴力性が侵食していきます。
大林宜彦監督は、『長岡花火物語』、『花筐』のなかでも戦争に対して、どちらかといえばマイルドで、抽象的に戦争の悲惨さを伝えていると感じていたのですが、この作品では、具体的に戦争の悲惨さを描きだしていて、沖縄戦のパートは、見るのが苦痛になるぐらいの状態でしたよ。
沖縄の市民を日本兵が虐殺、暴行をしたという事実については、自分は知らないことが多く、明言を避けます。
ただ、このような事が起きても何ら不思議ではない異常な状態が戦争であって、本当に碌なもんじゃないなと思う訳で。
他にも若い兵隊に対して、上官が気に入らないという理由で殺害するシーンは本当に腹が立ったし、実際にこんなことはあったんだろうなと想像ができるのでゲンナリしましたよ。
何よりも、沖縄戦であれだけのことをした人間が、しれっと社会に溶け込んでいる描写があってぞっとしました。
もちろん、戦場という異常な世界に巻き込まれて、心を保つために、あれは自分では無いという暗示をかけていくのも、一つの対処法かも知れません。
そうであるならば、戦争は世界一悪趣味なごっこ遊びだと思いましたよ。
映画内で、「無法松の一生」のワンシーンが演じられるのですが、正直名前ぐらいしか知らない自分にとってこの映画が、戦時中に軍から、戦後にはGHQから検閲を受けたのにも関わらず、名作として語り継がれていることを知りました。
遺作にも関わらず、エネルギッシュで意欲的で尖った映画でしたし、大林映画の集大成ともいえる完成度に圧倒されました。
私にとって、『長岡花火』を知るきっかけとなり、大林監督の映画をスクリーンで見ること出来た、思い出深い映画です。
終盤の筧利夫氏の演技に、説明が付かない涙が出てきたのを思い出します。
こちらもおススメでございます。