『哀れなるものたち』

 

おススメ度 94

※ネタバレあり

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解説

女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされた。

不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

プロデューサーも務めるストーンが純粋無垢で自由奔放な主人公ベラを熱演し、天才外科医ゴッドウィンをウィレム・デフォー、弁護士ダンカンをマーク・ラファロが演じる。「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」のトニー・マクナマラが脚本を担当。

2023年製作/142分/R18+/イギリス
原題:Poor Things
配給:ディズニー

以上、映画.comより引用。

 

 

家族の真似をして成長していると、やがて性的興味を持ち、外の世界に憧れをもって旅に出て、読書から哲学を知り、資本主義の歪な部分を目の当たりにして絶望して、無一文から実験としての娼館での経験を経て、そこで社会活動に興味を知り、父親の死によって家に戻り、医者を志す。

この映画はそんな話なのですが、ベラが男性だったら凡庸な物語になりそうな所、女性だからこそ意味があるなと思いました。

 

ベラを外の世界に連れ出した男が、ベラが他の男と関係を持つと傷つくくせに、自分は他の女と関係を持っても大丈夫という価値観。

正直、気持ち悪いと思っていて、男としてこの文化の片棒を担いだという自覚もあります。

自分はこういう時に苦笑いで済ましていたました。
振り返れば「コイツ、馬鹿なんすよ~。」で済ませるような嘲笑文化とも言える空気が強くあって、その空気に飲み込まれてしまったという反省があり、今思えば、カウンターをしなくてはいけなかった。
男側もこういう事に対して、不快な思いをしているという事をもっと発言すれば良かったと後悔している訳ですよ。

それをエマは一人で切り開いて行くのがとても痛快でした。


エンターテイメント皆無のSEX描写。

 

本来ならば成長と共に性に対して興味を持つのですが、エマは全ての事に対して実践から入って学んで行くというスタンスを崩さないので、SEX描写が自分の性欲を満たすためなので、エロス的な要素が少なく単純作業を見ているような感覚でした。

 

それにしても、エマ・ストーン身体張りまくり。

 

最後の方で歩きながらベラとマックスが会話する中で「私は娼館で他の男性と寝て30フラン稼いでいたのよ。」「30フランは少なくない?」というやり取りがあるのですが、それが淡々としてい凄い良かったです。
最後にエマが「性病検査に行くわ。」と会話を締めているのもとてもクール。


ベラの育ての親であるバクスターが父親から受けたアドバイス「慈愛を持って患部を切れ。」はいいセリフだった。

 


エマストーンの身体性が爆発しているダンスシーン。

船上でのダンスシーンはエマ・ストーンの良さが全面に現れていて、ぎこちない歩き方から少しずつ音楽に合わせて身体が動き出す感じが最高でした。

エマ・ストーンは『ラ・ラ・ランド』のダンスシーン然り『バトル・オブセクシーズ』で演じた女子プロテニスプレーヤー然り、身体を動かすシーンがとても見栄えする俳優なので、何倍もこの映画の魅力を増幅していると思った次第です。

この映画はベラが旅を通して世界を知り、自我を得るまでの話。

で終わらないのがこの映画の凄い所、旅から戻ってきたベラが、マックスと教会で婚姻しようとすると、ベラを妻と言う軍人が入り込んできて、まったく身に覚えがないベラが付いて行くと、この軍人が食事中に気に食わない事があるとすぐに拳銃を向けるような、DVクソ野郎というのが発覚。

屋敷からの外出もままならず、絶対絶命のところ、ベラが旦那と対峙して拳銃を旦那の足に発砲。そのまま旦那をベラの家へと搬送して緊急手術へ移行します。

手術も無事に済んで、庭で読書を楽しむベラや同じく過ごしているマックス、そして、楽しそうに草を食みながら羊の鳴き声を出す旦那。

という事は、旦那の脳を移植された羊もいるはずなのですが、登場しませんでした。

登場したとしてもやけに攻撃的でメーメー叫ぶ羊が映し出されるだけなのでカットも止む無し。

そのまま映画が終わりを迎えて、エンディングロールを見ながら、『哀れなるものたち』は、ベラを含めた全員、この映画を観ている全員だ!!と言われてるような気がして度肝を抜かれました。

 

この映画を観て思ったことは、エマ・ストーンは2023年のアカデミー主演女優賞を受賞します。

 

※2023年度アカデミー主演女優賞はエマ・ストーンが受賞しました。勿論『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でのリリー・グラットストーンの演技も素晴らしかったのですが、両方の映画を観た感想だと、エマ・ストーンの演技と躍動感が抜きんでていました。

アニメーション部門で『君たちはどう生きるか』の受賞は驚きと同時に、『アクロス・ザ・スパイダーバース』が何かしら受賞するだろうと予想していたので、無冠に終わったのが以外でした。

 

 

 

 

 

『バレンタインデーについて考えている事』

早いもので2月になりました。

少し前に「あけましておめでとうございます。」と言っていたのに、バレンタインデーも迫ってきていて、どうしたものかと思う今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

映画はちょこちょこと観てはいるのですが、これからは『ボーは恐れている』『オッペンハイマー』など話題作が目白押しで楽しみです。

 

話は変わりますが、もうすぐバレンタインデーですね、バレンタインデーって気が付いたら『自分チョコ』という新概念が提示されて驚いたのですが、自分チョコってそれは普通にチョコレート購入するのと何ら変わりが無いのでは?と思った次第です。

それが成立するなら、女性が男性に思いを伝えるというのも時代に合わないので、男性から女性にチョコレート渡すようにしましょう。

この際だ『義理チョコ』は禁止、未来永劫禁止。世の女性が余計な事で頭を悩ませる事自体ナンセンスな義理チョコのという謎概念。禁止にしましょう。

貰った貰わないで一喜一憂するのも禁止。義理なんだから何も進展も無い事を肝に銘じておきましょう。

 

そうなるとホワイトデーが崩壊する可能性も出てきて、マシュマロ、クッキー業界が岐路に立たされる事態になるかも知れません。

そうなったら、バレンタインデー商戦に殴り込みをかけていきましょう、これからのバレンタインデーはチョコレート、マシュマロ、クッキーの三つ巴の戦国時代に突入させましょう。

 

そこから何か新しい文化や商品が生まれるかも知れないので、その時は、それを見届けようと思います。

 

 

 

 

 

トーク·トゥ·ミー

 

おススメ度75

※ネタバレあり。

 

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解説

SNSで流行する「90秒憑依チャレンジ」にのめり込んだことから思わぬ事態に陥っていく女子高生を描き、2023年サンダンス映画祭で話題を呼んだオーストラリア製ホラー。

2年前の母の死と向き合えずにいる高校生ミアは、友人からSNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に誘われ、気晴らしに参加してみることに。それは呪われているという“手”のかたちをした置物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊が憑依するというもので、その“手”は必ず90秒以内に離さなければならないというルールがあった。強烈なスリルと快感にのめり込みチャレンジを繰り返すミアたちだったが、メンバーの1人にミアの亡き母が憑依してしまい……。

主人公ミアを演じるのは、ドラマ「エブリシング・ナウ!」のソフィー・ワイルド。人気YouTubeチャンネル「RackaRacka(ラッカラッカ)」を運営する双子の兄弟ダニー&マイケル・フェリッポウが長編映画監督デビューを果たした。

2022年製作/95分/PG12/オーストラリア
原題:Talk to Me
配給:ギャガ

以上、映画,comより引用。

 

今年最初に鑑賞する映画として、この映画と『エクスペンタブルズ ニューブラッド』で悩んだのですが、この映画を2024年の映画初めにしました。

 

何時の時代も不良がデカい顔して闊歩しているのを、いかに回避するかというサバイバルを強いられているのは今も昔も変わらずで、この訳の分からないイベントを持ってきたのがザ・不良グループの面々で、霊に乗り移っているのをSNSでアップしたりと調子づいているのですが、結局の所、この不良グループが酷い目に合わないのが生々しくてリアルでした。

家にタバコを吸いながら入って来て、注意されたらタバコを投げ捨てるクソ野郎が特に何も無くて、酷い目に合うのがミアの親友の弟という塩梅なのですが、もし、私が10代だったらこの映画に共感出来る部分があって、例え映画で不良グループが酷い目にあったとしても、現実の不良は存在している訳なので、一瞬溜飲を下げたところでサバイバルが続いていくという癪に障る感じが、ホラーと相性が良いのではと思いましたよ。

 

しかし、どうしても飲み込めないのが主人公であるミアの行動なのですが、とにかくミアが状況を悪くしているので、鑑賞していても全然気持ちが乗れませんでした。

 

最初、弟が若すぎるから霊と交信する時間は90秒ではなく50秒までにするという約束なのに、弟が交信した霊がミアの母親と知った瞬間に、ミアが2分まで延長させたあげく弟の身体が霊に乗っ取られて、片目を自分でくり抜くわ、テーブルで顔面を打ち付けて大出血するわの大暴れ。

 

警察に連絡、親友の弟は入院するのを目にして、ミアは母親と交信して弟を救出を考えるですが、それがまったく上手くいかず、逆にミアが霊に乗っ取られそうになる始末。

霊に乗っ取られる描写で、元カレと身体の向きを互い違いにして寝ている時に、元カレの足を霊が咥えているシーンが結構ショッキングだったのですが、次のシーンでミアが元カレの足を咥えていて、元カレがドン引き。というシーンは笑っていいのか、怖がっていいのか分からずに、困惑しました。

 

霊になった母親と交信している内に、現実と霊の世界が曖昧になったミアは、助けに来た父親の首にハサミを刺して、霊に乗り移った親友の弟も救えず、自分も霊に取りつかれて、何一つ解決しないまま終わるのは、ホラー映画として潔いなと思いました。

珍しいくらいに純粋なバッドエンド。

 

父親が娘の事を心配して思っていたが、それもミアは気付かないまま霊となって、違う国の誰かの声で呼ばれる所でこの映画は終わっていました。

 

観ようによっては、霊と交信するイベントはドラッグパーティーを想像させるし、参加した若者がドラック依存になって身を滅ぼす様子を、霊との交信で表現したのが、この映画なのではないかと思いました。

 

話は変わるのですが、映画を鑑賞しながら、全然ジャンルもテーマも違うのですが、このPVを思い出していました。

 

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FGO面白いよね。

 

おしまい。

 

あけましておめでとうございます。

2024年を迎えました。

昨年の1日平均の視聴数が2~5ぐらいのブログではありますが、閲覧していただきまして、誠にありがとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

昨年は『君たちはどう生きるか』の感想を100人近くの方が読んでいただき、ここに御礼を申し上げます。

 

今年度も、琴線に触れた映画の感想を書いていこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

ここまでが、新年の挨拶とさせていただきます。

ここからは、昨年ブログを書いてきた感想に移ります。

昨年は23本の映画の感想をブログに更新したので、月に2本ペースで書いて来たのですが、本当はもう少し映画の感想を上げたい。

しかし、単純に文章を書くのに時間が掛かるというジレンマが発生しているので、そこをどうするべきか、あれこれ悩んで書いていく所存です。

今年の目標として、パソコンの前に座って書こうとすると、一文字も書けなくなる状態を少なくする。というのがありましてね、何て言ったらいいでしょうか、掃除していたり、歩いている時に思いついた映画の感想についての構成や言葉が、書こうとした瞬間に真っ白になる現象が起こる時があって、その言葉の尻尾を掴んで引きずり出す作業をスムーズに出来る事を目標にします。とりあえず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年の映画の感想今年の内に。

師走だし、気が付けばもう今年も終わるしで、2023年11~12月に観た映画の感想をオムニバス方式で書いておこうと思いました。

 

 

kotfm-movie.jp

 

巨匠、マーティン・スコセッシが贈る、上映時間3時間26分の超大作映画なのですが、自分の映画人生でこれ以上の上映時間が長い映画を観る事は無いと思うくらいの映画体験。

この映画は、レオナルド・ディカプリオの顔芸とも言える表情の演技を堪能する映画でもあります。

私の中では『シャイニング』のジャック・ニコルソン級の顔のインパクトがありました。

幼少の時は、西部劇を観てインディアンから街を守る保安官の活躍で恰好良いなと思っていましたが、成長するにつれて完璧なプロパカンダと知り、楽しめなくなった思い出があるのですが、この映画で白人が先住民族に対して行った事を目の当たりにするとその思いは決定的になりました。

一言で言えば利権のためなら、手段を選ばない醜悪さ、気持ち悪さ、非人道的な行い。

どれも擁護できない。

キリスト教以外の宗教も認めない、白人以外だったら、殺しても構わないとする差別主義。これが事実だというのが驚きだった。

普通ならば重苦しくなるテーマにも関わらず、映画としてエンターテインメントになっているのが驚愕。もう一度書きます、驚愕しました。

ロバート・デニーロも出演していて、デニーロの顔芸も最高でした。

3時間を越える上映時間を成立させたのは、この二人の顔の演技だと思った次第です。

 

www.kitaro-tanjo.com

 

 

SNSで白髪の鬼太郎とスーツを着た男性のイラストが急に増え始めたので、牧歌的なイラストのイメージでこの映画を観に『入村』したのですが、映画を観て「おいおいおい、ウソだろ・・・」と思ったりしましたが、凄く良かったです。

戦後日本経済が復興した背景と妖怪を見事にリンクさせている脚本も良かったですし、キャラクターですよ、水木がある人物に吐き捨てた「あんた、つまんねぇな。」は経済至上主義に対するアンサーでもあるし、映画のカタルシスにもなっていて、胸がすく思いでした。

水木、あんた最高だったぜ!!!

 

目玉の親父があんなイケメンだったとは「人間が一番怖いよ。」何て、手垢にまみれたテーマを「こう表現するのか!!」と思いましたし、人間が持つ理性で制御出来なくなった狂気性もあって、本当にあのクソジジイが嫌いになりました。

 

そんな訳で、今年もブログを見ていただきまして、ありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。

 

それでは、良いお年をお迎えください。

 

 

 

 

 

 

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!

 

 

おススメ度 95

※ネタバレあり。

 

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解説

ニューヨークを舞台にカメの忍者4人組の活躍を描き、コミック、ゲーム、アニメ、映画などさまざまなメディアで根強い人気を誇る「ミュータント・タートルズ」を、アメコミタッチの新たなビジュアルで映画化した長編アニメーション。

ミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドは、不思議な液体「ミュータンジェン」に触れたことでミュータントとなったカメたちだ。目立つ姿を隠すため地下や路地裏で身をひそめるように過ごしているが、中身は普通の人間のティーンエイジャーと変わらない。学校に行ったり恋をしたり、人間と同じ生活を送ってみたいと願いながら、拳法の達人であるネズミのスプリンターを師匠に、武術の腕を磨いている。ある時、そんな彼らの前に、ハエのスーパーフライを筆頭としたミュータント軍団が現れる。同じミュータントの仲間がいたことを喜ぶタートルズだったが、スーパーフライ軍団は人間社会を乗っ取るという野望を抱いていた。

コメディアンで俳優のセス・ローゲンがプロデューサーを務めた。監督は、アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされた「ミッチェル家とマシンの反乱」で共同監督を務めたジェフ・ロウ。日本語吹き替え版の声優は宮世琉弥、「日向坂46」の齊藤京子佐藤二朗ら。

2023年製作/100分/G/アメリ
原題:Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem
配給:東和ピクチャーズ
劇場公開日:2023年9月22日

以上、映画.comより引用

 

私がティーンエイジャーだったら泣いていた。

 

正直、この映画の予告編を見た時は『まぁ、観なくても良いか案件。』に入っていたのですが、Twitter現ポストの評価が高いのもあって観たのですが、ほんっとうに観て良かった映画でした。(遠くを眺めながら。)

 

タートルズに助けてもらったエイプリル・オニールが「私を助けてくれたから、あなた達は怖くない。もし、街中で合っていたら叫んだと思う。」というのも本音だと思うし、何よりミュータント・タートルズが自分が何者でも無く、何かで認められたいという承認欲求だけが肥大している描写というのが突き刺さりました。

映画を観ながら「昔も、今もティーンエイジャーのしんどさというのは変わらないな。」と思いましたよ。

 

学校に辟易しているオニールと、学校に憧れているタートルズ達。

 

タートルズが、オニールの案内で学校を見学するシーンも個人的には良くて、学校で目にする全てが新鮮でテンションが上がるタートルズ達に対して、オニールは対比するようにテンションが下がっていく描写が生々しいなと思いました。


オニールのテンションが低い理由は、校内テレビで記事を読む途中に極度の緊張で嘔吐するというトラウマがあるからなのですが、本人の気持ちとは裏腹に、それがネットで拡散され、中には吐しゃ物に虹のエフェクトをかける人間もいる始末で、オニールがネットのオモチャとして、いじられる対象になっているのは現代的だなと思いました。

タートルズが、掲示板かに書かれていた『進撃の巨人』というワードを目にして「進撃の巨人知ってる人いるんだ。」ってテンションが上がるのは見ていて微笑ましいし、この映画は漫画『新劇の巨人』が存在する世界だと知ると、タートルズ達が現在に存在する実在感を感じることが出来ました。


タートルズの育ての親、スプリンターの目線で観ると感慨もひとしお。

父親代わりとして、タートルズたちに武器を伝授したスプリンターの悲哀というのも観ていて非常に良かった。
一度、人間の世界に関わろうとしたが拒絶されて地下のマンホールに過ごすシーンは観ていて切なくなりましたし、外の世界に行かせないようとする親心と、それに伴う閉塞感。
人間がスプリンターに対して拒絶するシーンは半ばホラー映画のようで、スプリンターの絶望感がちゃんと表現されていたのも印象的でした。


ミュータント軍団のスーパーフライ

ヒーロー物だけでは無いのですが、何故か同じ境遇であるのにも関わらず敵対関係になってしまい、それが「弱い物たちが、さらに弱い物たちを叩く。」という構図になり、権力者は何もしなくても左うちわで、安泰。なんて状況になってしまいがちになってしまうのですが、スーパーフライの暴走に対して、ミュータント軍団がタートルズと力を合わせる展開は映画的に盛り上がりました。
対峙ではなくて、協力するというのが権力に立ち向かう唯一の方法だと思いますし、解決する糸口になる訳で、この映画はミュータント軍団が問題に対して自分で考えて、意義を唱え行動する姿に感情を動かされました。
スーパーフライが巨大化して、大暴れするのを止める時にタートルズが思い出すのが『進撃の巨人』で、そこで首の後ろを攻撃する事で決着します。
何気ないセリフが物語に関わる重要な意味を持たせるという手腕は観ていて関心しました。

 

童話の『泣いた赤鬼』のように、マイノリティが認められるには結果を残さないと駄目なのか、という問題が横たわるのですが、ヒーローは存在がマイノリティな訳で、この問題は永遠の課題と言えます。
しかし、この映画はその後があるのが良かった。アメリカの危機を救った彼らは、ティーンエイジャーとしてハイスクールに通い、それぞれ好きな事を見つけ、トレードマークのアイマスクを手放す。
正体を隠さずに、ありのままの姿で生活するところに凄く意味があるし、何度も言いますが私がティーンエイジャーだったら多分、泣いた。咽び泣いた。

続編を匂わせる終わり方も綺麗だったし、これで完結したとしても問題無いクオリティだったので。続編が作成決定のニュースを知った時は、素直に喜びました。
現在ティーンエイジャーの人も、ティーンエイジャーだった人も、全ての人にお勧めできる娯楽映画だと思いましたよ。

親になると、スプリンター視点で映画を観る事が出来るだろうし、幅広い世代に向けて制作されている印象を受けた次第です。

『ゴジラ-1.0』

 

 

おススメ度 89

※ネタバレあり。

山崎監督の作品が好きな方にとって、不快に思われる事を書いていますのでご了承ください。

 

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解説

日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズをはじめ「永遠の0」「寄生獣」など数々の話題作を生み出してきたヒットメーカーの山崎貴が監督・脚本・VFXを手がけた。

タイトルの「−1.0」の読みは「マイナスワン」。舞台は戦後の日本。戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。

主演を神木隆之介、ヒロイン役を浜辺美波が務め、2023年4~9月に放送されたNHK連続テレビ小説「らんまん」でも夫婦役を演じて話題を集めた2人が共演。戦争から生還するも両親を失った主人公の敷島浩一を神木、焼け野原の戦後日本をひとり強く生きるなかで敷島と出会う大石典子を浜辺が演じる。そのほか山田裕貴青木崇高吉岡秀隆安藤サクラ佐々木蔵之介と実力派豪華キャストが共演。

2023年製作/125分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2023年11月3日

映画.comより引用

 

人間に明確な殺意を持っているゴジラ、銀座に現れる。

 

映画の冒頭で人間を口に入れながらも遠くに飛ばす光景を見て「ゴジラ、人間を食べないんだ。」とは思いました。


食べた方が自然だと思ったのですが、これは恐竜ではなくてゴジラが人間を捕食する描写が無いというのが理由だと思いますが、少し違和感がありました。

監督を務めた山崎監督の映画については、言いたいことはあります。

『スタンドバイミードラえもん』については、予告編を見た時に、泣かせてやろうという魂胆が心底不快で『ドラ泣き』なんてフレーズを聞いた時は、スクリーンを手刀で切り裂いてやろうかと思ったくらいです。


しかし、知人にはこの映画に感銘を受けている人もいる訳で、その事を直接言う事はありませんでした。


あと思っている事を全部セリフとして役者に喋らせる傾向も見受けられます。

例えですが「暑い!!」「寒い!!」といった状態もセリフにしてしまうイメージなので、山崎監督は映画を観ている観客の事を信用していないのか、あるいは、人間の機微を描くのが苦手な監督だと思っています。


そういう部分はありながらも、この作品は面白かったです。

 

長々と書きましたが、ここからは、飛行機のように両手を伸ばして走りながら「ゴジラ暴れるシーン最高~~。」と言い続ける文章になりますので、ご了承ください。
この映画、言いたいこともありますが、私は断固指示します。


ゴジラが登場した時の圧倒的な絶望感。

 

今回のゴジラは明らかに人間を認識していて敵とみなしているのと、ゴジラの視線が低いので見られている恐怖が常に付きまとう事になります。

その振る舞いは隠れているのび太を必ず見つけるジャイアンの如し。
ゴジラが意志を持って人間を踏みつぶしに来る情け容赦無さは自然災害そのもので、人間の手に負えない絶望感と虚脱感が襲ってくる説得力がありました。

放射熱線を放射する時にゴジラの背びれの部分が下から上へと青く光輝いてから、口から放射する描写が圧巻だったのと同時に「こんな感じで充電を知らせる家電があったな。」と思いました。

今回、銀座と共に国会議事堂も放射熱線で吹き飛ばしたので、銀座一帯は放射能汚染により使用禁止、国家の存亡の危機になるとは思いますが、何故か行政の人間が出てこないのも違和感はありましたが、そういう映画だとして飲み込みます。

個人的には、もっとゴジラが銀座で大暴れしてほしかったです。

尻尾で劇場を壊したりはしていましたが、銀座一帯を焼け野原にしていいくらいに。
せっかくタイトルをゴジラ-1.0と銘打っているのですから、絶望と本当のマイナスを見せつけて欲しかった。放射能熱線の衝撃と、その後黒い雨が降らせるシーンなど、ゴジラが躍動するシーンは全て良かったです。

 

貴方の戦争は終わりましたか。

これは、最後のシーンでヒロインの大石が敷島に言ったセリフなのですが、

貴方の『戦争』の部分は、課題や問題と言い換えると、結局、困難に向き合わないと問題は解決しない。と解釈して、そこは胸にグッときました。
特攻から逃げて来た主人公が、最後ゴジラに戦闘機で特攻をせずにパラシュートで脱出して生き延びた事に対しては、有りだと思っています。

時代設定が戦後間もなくだとしても、制作しているのが現代なのだから、そこは今のメッセージを入れるべきだからです。
ただ、これも飛行機を整備した橘が敷島に「ここを押すと脱出装置が発動して・・・」というセリフを言わせているのが完全な蛇足でした。

しかし、神木隆之介ゴジラに対する憎悪を持った表情は一見の価値がありました。

ゴジラを深海に沈めて一気に急上昇させる戦法も観ていて面白かったし、なにより、ゴジラのメインテーマが掛かるタイミングも最高でした。

何度も書きますがゴジラが暴れて躍動するシーンは全て良かったです。

 

ゴジラの問題を先送りにしたシン・ゴジラに対して、ゴジラと対峙して決着をつけたゴジラマイナス1・0は、庵野監督の問いかけに山崎監督が応えた『アンサームービー』であると思いました。

今回のオススメ度の内訳は、ゴジラが躍動するシーンが2兆点、人間ドラマがマイナス3兆点、ゴジラのメインテーマが流されたタイミングが1兆89点なので、今回のオススメ度は89となった次第です。