『金の国水の国』

 

おススメ度  98

※ネタバレあり。

 

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2017年「このマンガがすごい!」で第1位を獲得した岩本ナオの同名コミックをアニメーション映画化。

商業国家で水以外は何でも手に入る金の国と、豊かな水と緑に恵まれているが貧しい水の国は、隣国同士だが長年にわたりいがみ合ってきた。金の国のおっとり王女サーラと、水の国で暮らすお調子者の建築士ナランバヤルは、両国の思惑に巻き込まれて結婚し、偽りの夫婦を演じることに。自分でも気づかぬうちに恋に落ちた2人は、互いへの思いを胸に秘めながらも真実を言い出せない。そんな彼らの優しい嘘は、やがて両国の未来を変えていく。

俳優の賀来賢人がナランバヤル、浜辺美波がサーラの声を担当。「サマーウォーズ」のマッドハウスがアニメーション制作を手がけ、テレビドラマ「コウノドリ」の坪田文が脚本、人気アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」やNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のエバン・コールが音楽を担当。

2023年製作/117分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画

以上、映画.comより引用。

 

おとぎ話のようで、これは私たちの物語。

 

先日のブログにて、上映する映画館を間違えるミスをしてしまった私としては、是非とも見たかった映画だったので、鑑賞することが出来て感無量でした。

特筆するところは、王女サーヤのチャーミングさとナランバヤルの関係性の描き方だと思っています。

ナランバヤルはサーヤに対して、容姿や体形ついて揶揄したり、いじったりするような発言を一切しないし、サーヤはナランバヤルの事を常に案じたり気にかけるています。

二人ともお互いを思いやり尊重するというのが根底にあるので、見ていて心が洗われるようでした。

作中にサーヤがナランバヤルに向けて「いつでも、難しい方の道を選んでください。」という言葉があるのですが、それがとても良くでですね。

 

鑑賞しながら少し泣いてしまいましたよ。

 

本当はナランバヤルに居てほしいけど、そこをぐっと堪えて送り出すサーヤは強い人間だなと。

 

サーヤにとって緊張する相手でもある、異母姉のレオポルディーネもしかり、左大臣として仕えているムーンライトしかり、この映画にでてくる登場人物たちは、それぞれの思いを持って行動しているだけで、根っからの悪人というのが登場しません。

 

だからこそ、国王のラスタバン三世の右大臣として仕えている、戦争推進派のピリパッパが国王に戦争の提案をするのも、国や国王を思ってのことだったりするのが、難しいところ。

 

ラスタバン三世は先代のラスタバン二世が『水の国』と国交交渉を行った唯一の王であったため、国民からは現在も『腰抜け王』と呼ばれ続けていて、ストレスで慢性の頭痛を抱えています。

 

その汚名を払拭するべく水の国との戦争を模索しているのですが、そこに民の事などは頭になく、意地と面子だけのために戦争を仕掛けようとするのが見ていて怖かったです。

 

しかし『水の国』からすれば、ラスタバン二世は唯一国交交渉を行った王として、高い評価を得ているのに、その情報が本人に入ってこないという皮肉。

 

印象的だったのが、サーヤがナランバヤルと逃げるシーンで、空中に石の柱がピアノの鍵盤のように何個も並ぶことで通路が出来るシーンがあるのですが、その通路が老朽化しているため、二人乗ったら崩れてしまう可能性がある中、サーヤが、ナランバヤルだけでも行ってくださいと伝えるのですが、ナランバヤルが二人でいこうとサーヤに手を差し伸べるシーンを見た時は、映画館で声を出していいのならこう言います。「ナランバヤル、あんた格好いいぜ!!」と。

 

このシーンを見て私は、「自分だけが救われても、あなたがいなければ、この世界に意味は無い。」と解釈しました。

 

そして、サーヤの持つふくよかな体形がキャラクターだけではなく、ナランバヤルと心が繋がる演出になっているのを見て、心の中で「すげー。この演出まじすげー。」と思いました。

 

最後、首謀者のピリパッパが、特に罰を受けなかった事がマイナスといえば、マイナスですが、体調によってはそんなに気にならないと思うのでこれくらいにします。

 

映画館では、丁度『鬼滅の刃』も上映されていて人が溢れていたのですが、この映画は私を入れて3人だけでした。

この映画、もっと見る人がいてもいい。というか、見ていただきたいので、劇場でご覧いただけると幸いです。