『哀れなるものたち』

 

おススメ度 94

※ネタバレあり

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解説

女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされた。

不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

プロデューサーも務めるストーンが純粋無垢で自由奔放な主人公ベラを熱演し、天才外科医ゴッドウィンをウィレム・デフォー、弁護士ダンカンをマーク・ラファロが演じる。「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」のトニー・マクナマラが脚本を担当。

2023年製作/142分/R18+/イギリス
原題:Poor Things
配給:ディズニー

以上、映画.comより引用。

 

 

家族の真似をして成長していると、やがて性的興味を持ち、外の世界に憧れをもって旅に出て、読書から哲学を知り、資本主義の歪な部分を目の当たりにして絶望して、無一文から実験としての娼館での経験を経て、そこで社会活動に興味を知り、父親の死によって家に戻り、医者を志す。

この映画はそんな話なのですが、ベラが男性だったら凡庸な物語になりそうな所、女性だからこそ意味があるなと思いました。

 

ベラを外の世界に連れ出した男が、ベラが他の男と関係を持つと傷つくくせに、自分は他の女と関係を持っても大丈夫という価値観。

正直、気持ち悪いと思っていて、男としてこの文化の片棒を担いだという自覚もあります。

自分はこういう時に苦笑いで済ましていたました。
振り返れば「コイツ、馬鹿なんすよ~。」で済ませるような嘲笑文化とも言える空気が強くあって、その空気に飲み込まれてしまったという反省があり、今思えば、カウンターをしなくてはいけなかった。
男側もこういう事に対して、不快な思いをしているという事をもっと発言すれば良かったと後悔している訳ですよ。

それをエマは一人で切り開いて行くのがとても痛快でした。


エンターテイメント皆無のSEX描写。

 

本来ならば成長と共に性に対して興味を持つのですが、エマは全ての事に対して実践から入って学んで行くというスタンスを崩さないので、SEX描写が自分の性欲を満たすためなので、エロス的な要素が少なく単純作業を見ているような感覚でした。

 

それにしても、エマ・ストーン身体張りまくり。

 

最後の方で歩きながらベラとマックスが会話する中で「私は娼館で他の男性と寝て30フラン稼いでいたのよ。」「30フランは少なくない?」というやり取りがあるのですが、それが淡々としてい凄い良かったです。
最後にエマが「性病検査に行くわ。」と会話を締めているのもとてもクール。


ベラの育ての親であるバクスターが父親から受けたアドバイス「慈愛を持って患部を切れ。」はいいセリフだった。

 


エマストーンの身体性が爆発しているダンスシーン。

船上でのダンスシーンはエマ・ストーンの良さが全面に現れていて、ぎこちない歩き方から少しずつ音楽に合わせて身体が動き出す感じが最高でした。

エマ・ストーンは『ラ・ラ・ランド』のダンスシーン然り『バトル・オブセクシーズ』で演じた女子プロテニスプレーヤー然り、身体を動かすシーンがとても見栄えする俳優なので、何倍もこの映画の魅力を増幅していると思った次第です。

この映画はベラが旅を通して世界を知り、自我を得るまでの話。

で終わらないのがこの映画の凄い所、旅から戻ってきたベラが、マックスと教会で婚姻しようとすると、ベラを妻と言う軍人が入り込んできて、まったく身に覚えがないベラが付いて行くと、この軍人が食事中に気に食わない事があるとすぐに拳銃を向けるような、DVクソ野郎というのが発覚。

屋敷からの外出もままならず、絶対絶命のところ、ベラが旦那と対峙して拳銃を旦那の足に発砲。そのまま旦那をベラの家へと搬送して緊急手術へ移行します。

手術も無事に済んで、庭で読書を楽しむベラや同じく過ごしているマックス、そして、楽しそうに草を食みながら羊の鳴き声を出す旦那。

という事は、旦那の脳を移植された羊もいるはずなのですが、登場しませんでした。

登場したとしてもやけに攻撃的でメーメー叫ぶ羊が映し出されるだけなのでカットも止む無し。

そのまま映画が終わりを迎えて、エンディングロールを見ながら、『哀れなるものたち』は、ベラを含めた全員、この映画を観ている全員だ!!と言われてるような気がして度肝を抜かれました。

 

この映画を観て思ったことは、エマ・ストーンは2023年のアカデミー主演女優賞を受賞します。

 

※2023年度アカデミー主演女優賞はエマ・ストーンが受賞しました。勿論『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でのリリー・グラットストーンの演技も素晴らしかったのですが、両方の映画を観た感想だと、エマ・ストーンの演技と躍動感が抜きんでていました。

アニメーション部門で『君たちはどう生きるか』の受賞は驚きと同時に、『アクロス・ザ・スパイダーバース』が何かしら受賞するだろうと予想していたので、無冠に終わったのが以外でした。