ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!

 

 

おススメ度 95

※ネタバレあり。

 

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解説

ニューヨークを舞台にカメの忍者4人組の活躍を描き、コミック、ゲーム、アニメ、映画などさまざまなメディアで根強い人気を誇る「ミュータント・タートルズ」を、アメコミタッチの新たなビジュアルで映画化した長編アニメーション。

ミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドは、不思議な液体「ミュータンジェン」に触れたことでミュータントとなったカメたちだ。目立つ姿を隠すため地下や路地裏で身をひそめるように過ごしているが、中身は普通の人間のティーンエイジャーと変わらない。学校に行ったり恋をしたり、人間と同じ生活を送ってみたいと願いながら、拳法の達人であるネズミのスプリンターを師匠に、武術の腕を磨いている。ある時、そんな彼らの前に、ハエのスーパーフライを筆頭としたミュータント軍団が現れる。同じミュータントの仲間がいたことを喜ぶタートルズだったが、スーパーフライ軍団は人間社会を乗っ取るという野望を抱いていた。

コメディアンで俳優のセス・ローゲンがプロデューサーを務めた。監督は、アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされた「ミッチェル家とマシンの反乱」で共同監督を務めたジェフ・ロウ。日本語吹き替え版の声優は宮世琉弥、「日向坂46」の齊藤京子佐藤二朗ら。

2023年製作/100分/G/アメリ
原題:Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem
配給:東和ピクチャーズ
劇場公開日:2023年9月22日

以上、映画.comより引用

 

私がティーンエイジャーだったら泣いていた。

 

正直、この映画の予告編を見た時は『まぁ、観なくても良いか案件。』に入っていたのですが、Twitter現ポストの評価が高いのもあって観たのですが、ほんっとうに観て良かった映画でした。(遠くを眺めながら。)

 

タートルズに助けてもらったエイプリル・オニールが「私を助けてくれたから、あなた達は怖くない。もし、街中で合っていたら叫んだと思う。」というのも本音だと思うし、何よりミュータント・タートルズが自分が何者でも無く、何かで認められたいという承認欲求だけが肥大している描写というのが突き刺さりました。

映画を観ながら「昔も、今もティーンエイジャーのしんどさというのは変わらないな。」と思いましたよ。

 

学校に辟易しているオニールと、学校に憧れているタートルズ達。

 

タートルズが、オニールの案内で学校を見学するシーンも個人的には良くて、学校で目にする全てが新鮮でテンションが上がるタートルズ達に対して、オニールは対比するようにテンションが下がっていく描写が生々しいなと思いました。


オニールのテンションが低い理由は、校内テレビで記事を読む途中に極度の緊張で嘔吐するというトラウマがあるからなのですが、本人の気持ちとは裏腹に、それがネットで拡散され、中には吐しゃ物に虹のエフェクトをかける人間もいる始末で、オニールがネットのオモチャとして、いじられる対象になっているのは現代的だなと思いました。

タートルズが、掲示板かに書かれていた『進撃の巨人』というワードを目にして「進撃の巨人知ってる人いるんだ。」ってテンションが上がるのは見ていて微笑ましいし、この映画は漫画『新劇の巨人』が存在する世界だと知ると、タートルズ達が現在に存在する実在感を感じることが出来ました。


タートルズの育ての親、スプリンターの目線で観ると感慨もひとしお。

父親代わりとして、タートルズたちに武器を伝授したスプリンターの悲哀というのも観ていて非常に良かった。
一度、人間の世界に関わろうとしたが拒絶されて地下のマンホールに過ごすシーンは観ていて切なくなりましたし、外の世界に行かせないようとする親心と、それに伴う閉塞感。
人間がスプリンターに対して拒絶するシーンは半ばホラー映画のようで、スプリンターの絶望感がちゃんと表現されていたのも印象的でした。


ミュータント軍団のスーパーフライ

ヒーロー物だけでは無いのですが、何故か同じ境遇であるのにも関わらず敵対関係になってしまい、それが「弱い物たちが、さらに弱い物たちを叩く。」という構図になり、権力者は何もしなくても左うちわで、安泰。なんて状況になってしまいがちになってしまうのですが、スーパーフライの暴走に対して、ミュータント軍団がタートルズと力を合わせる展開は映画的に盛り上がりました。
対峙ではなくて、協力するというのが権力に立ち向かう唯一の方法だと思いますし、解決する糸口になる訳で、この映画はミュータント軍団が問題に対して自分で考えて、意義を唱え行動する姿に感情を動かされました。
スーパーフライが巨大化して、大暴れするのを止める時にタートルズが思い出すのが『進撃の巨人』で、そこで首の後ろを攻撃する事で決着します。
何気ないセリフが物語に関わる重要な意味を持たせるという手腕は観ていて関心しました。

 

童話の『泣いた赤鬼』のように、マイノリティが認められるには結果を残さないと駄目なのか、という問題が横たわるのですが、ヒーローは存在がマイノリティな訳で、この問題は永遠の課題と言えます。
しかし、この映画はその後があるのが良かった。アメリカの危機を救った彼らは、ティーンエイジャーとしてハイスクールに通い、それぞれ好きな事を見つけ、トレードマークのアイマスクを手放す。
正体を隠さずに、ありのままの姿で生活するところに凄く意味があるし、何度も言いますが私がティーンエイジャーだったら多分、泣いた。咽び泣いた。

続編を匂わせる終わり方も綺麗だったし、これで完結したとしても問題無いクオリティだったので。続編が作成決定のニュースを知った時は、素直に喜びました。
現在ティーンエイジャーの人も、ティーンエイジャーだった人も、全ての人にお勧めできる娯楽映画だと思いましたよ。

親になると、スプリンター視点で映画を観る事が出来るだろうし、幅広い世代に向けて制作されている印象を受けた次第です。