『BLUE GIANT』

 

オススメ度 99

※ネタバレあり。

 

www.youtube.com

 

2013年から小学館ビッグコミック」にて連載開始した石塚真一の人気ジャズ漫画「BLUE GIANT」をアニメ映画化。

仙台に暮らす高校生・宮本大はジャズに魅了され、毎日ひとり河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業と同時に上京した彼は、高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込む。ある日、ライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会った大は彼をバンドに誘い、大に感化されてドラムを始めた玉田も加わり3人組バンド「JASS」を結成。楽譜も読めずただひたすらに全力で吹いてきた大と、幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈、そして初心者の玉田は、日本最高のジャズクラブに出演して日本のジャズシーンを変えることを目標に、必死に活動を続けていく。

主人公・宮本大の声を人気俳優の山田裕貴が担当し、沢辺雪祈を間宮祥太朗、玉田俊二を岡山天音が演じる。「名探偵コナン ゼロの執行人」の立川譲が監督、原作の担当編集者でストーリーディレクターも務めるNUMBER 8が脚本を手がけ、「幼女戦記」シリーズのNUTがアニメーション制作を担当。世界的ピアニストの上原ひろみが音楽を手がけ、劇中曲の演奏も担当した。

2023年製作/120分/日本
配給:東宝映像事業部

 以上、映画.comより

 

鑑賞後、家で静かに過ごしていても、耳の奥で聞こえるサックスの音色。

 

映画『BLUEGIANT』を鑑賞した。
私の映画館でのジャズ体験は「ジャズすっべ。」でお馴染みの『スイングガールズ』以来だ。
そういえば、『BLUEGIANT』の宮本大は宮城県の出身で、『スイングガールズ』の舞台は東北の片田舎と言われているが、実際には山形県置賜地方なので、ジャズと東北って相性良いのかもしれない。
ちなみに、この映画を脳内にある引き出しに収納するならば映画『ボヘミアン・ラプソディ』と同じ場所に収納した。

JASSのライブにおけるCG表現が稚拙という感想も目にしたが、確かに少し気になる部分もあった。

ライブの演奏シーンでは、宮城県時代のエピソードが映像でフラッシュバックされたり、ライブの高揚感を抽象的な映像によって表現する事で、CGが気にならないくらいに素晴らしい作品になっていました。

映画を見終わって、家に帰っても耳の奥でサックスの音色が響いていたので、この演奏を大音量で聴けるだけでも映画館に足を運ぶ価値はある。

報われる保証も無いのにも関わらず、努力を続けられることが才能。


努力や練習が必ず報われるなら、いくらでもする。
そうでないから、努力や練習する事は苦しくなる。

宮本の同級生でドラムを担当した玉田、ピアノ担当の沢辺はそれこそ身を削って努力をしている、玉田は大学を留年するぐらいにドラムの練習に全てを捧げていて、沢辺は幼少からずっとピアノを弾き続けている。そこには自分の才能に対する絶望と悲壮感が漂っている。

しかし、宮本大は努力を苦にしていない、それどころか努力とすら思っていないくらいに悲壮感が無い。

世界一のジャズサックス奏者を目指す彼にとって、サックスを練習する事が当たり前で日常なのだ。

そして、宮本大は練習や努力に対して常に全力で向き合っている。
なりふり構わず、一心不乱な姿に心を打たれる人もいるだろう。
宮本大と自分を対比した時に、自分は宮本大のように必死に生きているか、自問自答をするきっかけになる映画でもある。
本当の自分なんて見たくない。嘘でもいいから偽りの姿で生きていたいと思う人も多いのではないか。

想像の中では、紅顔の美少年で王子様でも、現実は二段顎で三段腹の四頭身だとするならば、後者と向き合うのが人生だろう。
この映画は、今の自分を映し出される鏡だ。
宮本大が光輝けば輝くほど、自分の闇がより深くなっていく。

この映画のジャズミュージシャンの多くは、ジャズは衰退していく音楽ジャンルと認識していて、1パーセントしか存在しないジャズファンのニーズに、いかに応えるかを考えている。しかし、宮本大だけが、99パーセントの人達にもジャズを聴かせたいと思っているのが印象に残る。
昔、『TED』というプレゼン番組で、指揮者が出演しているのを思い出した。

その指揮者も「クラシックを聞く人なんて、人口の3パーセントに満たない。」と言いながら、それでもクラシックは万人に共有する事の出来る音楽だということを見事に証明してみせた。

クラシックと同様に、ジャズも万人に伝わるという事をこの映画を見れば理解していただけると思う。

ジャズの素養も無い私が、ジャズに圧倒されてこうして感想を書きたい衝動が湧きあがったのだから。

時代が変わりAIが台頭しようと、LIVEのように人が人前で何かを表現する行為は普遍にあり続けると確信した。

ただ、日本最高のジャズクラブ「So Blue」にJASSとしてライブする事が決定した前日に、沢辺が自動車誘導のアルバイト中、トラックに轢かれてしまうのだが、漫画だと誘導中に正面から来たトラックに激突されるシーンとして描かれているのに対して、アニメだと沢辺が空を見上げながらJASSのメンバーに感謝の気持ちを心の中で独白していて、その見上げている時間が結構長く、視線を戻すとトラックが目の前に来ているため、沢辺の前方不注意にしか見えないのが気になりました。

このシーンを見たときは「大事なライブの前日なのに気を抜くなよ、そもそも、車の誘導しているのだから、より気をつけなきゃ駄目だろう。命に別状は無くて本当に良かったけど。」と思いました。

当日の演奏は、サックスとドラムの編成で挑むことになりますが、最後までやり遂げて喝采を浴び、最後のアンコールでは、左手だけは無事だった沢辺が病院から合流して三人でのセッションを披露してライブは大成功で幕を閉じました。

そして「So Blue」の演奏で「JASS」は解散して、宮本がドイツのミュンヘンに旅立つ所で終わりを迎えます。

もし、『BLUEGIANT』ミュンヘン編がアニメ映画化された時は、ライブシーンのCGがもっと良くなっている事を願って。オススメ度は99となりました。

 

もし、CGが『THE FIRST SLAMDUNK』ぐらいにスムーズに動いたとしたら、オススメ度はインフィニティまで跳ね上がります。

 

ジャズを知らずとも、見る価値がある映画です。

 

 

期間限定で、一部無料で閲覧できます。